そんな二人の後ろ姿に、芦屋は自身の胸がチクリと痛んだことを気付かない振りをした。

「じゃあ、1時間目はこのまま保健室で休ませておくわね」

養護教諭の三上が、飛坂にニッコリ笑いかけた。「あ、じゃあお願いします……」

頭を下げる飛坂だが、その視線の先はあいも変わらずベッドの上の友美。

そんな彼の様子を、三上はニコニコしながら眺めていた。

飛坂の、赤い顔をしながらも心配そうなその表情。きっと彼はこの女子生徒のことを好きなのだろう。

そう考えると30代半ばの、酸いも甘いも知り尽くした三上にとっては、格好の好奇心のネタとなる。

(青春だわぁ)

1人勝手に妄想を膨らませては、ニヤニヤが止まらなくなった三上は、

元来のおせっかいな性格がむくむくと湧き上がってくるのであった。

独身で浮いた話のない三上は、他人の恋バナを羨んだりすることもあったが、相手が中学生ならば話は別だ。

子供の好きだ嫌いだなんて、可愛く見えて仕方がない。

まるで甘酸っぱい恋愛小説を間近で味わっているような気がした三上は、

「あ、そうだ飛坂くん」「はい?」

「私ね、ちょっとこのプリントを全校生徒分、印刷してこなきゃいけないのよ。だから、ちょっと留守する間、ここにいてくれる?」

「え?」もちろん、三上の嘘である。いや、仮に本当であっても、養護教諭が生徒に保健室の留守を任せるはずがない。

しかしそれを三上がやってのけたのは、単なる若い男女の恋愛への好奇心ももちろんあったのだが、友美を見つめる飛坂の切ない表情が、三上を突き動かしてしまったのだ。

「じゃあ、すぐ戻るからお願いね」

いつもの軽い感じで、あっけにとられる飛坂に手を振りながら、保健室を後にする三上。

(うーん、私ってば気が利く)

つづきは明日・・・